インターネットが普及した今、持っていない企業はないというほどオウンドメディアは一般化し、まるでドレスコードのような存在となっています。
しかし、「オウンドメディアを立ち上げたは良いけど、どうしたら良いのかわからない」「KPIの設定方法について教えてほしい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回はオウンドメディアの運営に携わっている方へ向けて、オウンドメディアのKPI設定について詳しく解説します。
この記事を読めば、オウンドメディアのKPI設定のポイントや、設定するべき理由が分かり、適切にKPIを設定できます。
オウンドメディアにおけるKPIとKGI
オウンドメディアとは?KPI・KGIとは?それぞれ解説します。
オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、自社で保有しているメディアのことを指します。例えば、北欧雑貨などを扱うECサイト「北欧、暮らしの道具店」は、暮らしの情報を発信するオウンドメディアを保有しています。
こういったオウンドメディアはどのように作るのでしょうか?また、企業はどういった目的でオウンドメディアを保有しているののでしょうか?以下、詳しく解説します。
オウンドメディアの作り方
オウンドメディアは、ただ保有していれば良いというものではありません。しっかりと設計された、企業の発展に貢献するものである必要があります。
効果のあるオウンドメディアの作り方は、以下のとおりです。
- ユーザー調査・市場調査
- ターゲット(ペルソナ)設定
- コンセプト設計
- 集客チャネル設計
- カスタマージャーニー設計
このように綿密な戦略を立てることで、始めてオウンドメディアは事業に貢献します。
オウンドメディアを作る目的
オウンドメディアを作る目的は、端的にいえば有料広告以外でユーザーとの接触点となる媒体を持つことです。
オウンドメディアを作って検索エンジンから集客をすることで、検索ユーザーにアプローチできます。
また、オウンドメディアにコンテンツを蓄積すること自体も、オウンドメディア作成の目的といえます。
オウンドメディアにコンテンツを蓄積することは、企業にとってメリットが大きいです。以下の「オウンドメディアのメリット」で、合わせて紹介します。
オウンドメディアのメリット
オウンドメディアの1番のメリットは、コンテンツが資産になることです。「コンテンツが資産になる」とは、作成したコンテンツが半永久的に広告効果を発揮してくれることを指します。
一度コンテンツを作成してしまえば、その後、広告費が必要になることはありません。したがって、費用対効果が高い宣伝方法だといえます。
また、自社ブランディングを高められることもオウンドメディアのメリットの1つです。
ユーザーの役に立つコンテンツで集客するので、ユーザーに嫌悪感を持たれることがありません。
その上、自社の蓄積している知識や理念、ユーザーへの思いなどを自然な形で伝えることもできます。
オウンドメディアの運営
オウンドメディアの運営は、1~2人でやっている企業がほとんどです。したがって、企業内でオウンドメディアに割く人的リソースは最小限で済みます。
少人数でオウンドメディアを運営できる理由の1つは、外部リソースもうまく利用していることが挙げられます。
企業外部にオウンドメディアの運営チームを構築することで、社内のリソースを圧迫することなく、オウンドメディアの運営が可能です。
オウンドメディア構築の5つのポイント
オウンドメディア構築のポイントは、以下の5つが挙げられます。
①中長期的な取り組みであると理解する
オウンドメディアは、結果が出るまでには3ヵ月以上かかる場合があります。なぜなら、コンテンツを作成してから検索結果に表示されるまでにラグがあるからです。ですが、コンテンツが蓄積することによって、効果が出やすくなります。
②マーケティング課題とメディア運用の目的を合致させる
マーケティング課題によって、メディアの構築方法も異なります。例えば、商品の売上を挙げたいなら、商品に興味のあるユーザー向けのコンテンツを作成しなければなりません。メディア運用の目的を明確にすることが重要です。
③長期的に役に立つようなコンテンツ
オウンドメディアの大きな特徴は、長期的な集客効果が見込めることです。したがって、長期的に役に立つようなコンテンツを作ることが重要であるといえます。口コミやレビュー、ノウハウなど時代に左右されないコンテンツが良いでしょう。
④的確なチャネル設計をする
ターゲット層に合ったチャネル戦略を立てることも重要です。例えば、中高生はInstagramやTwitter、YouTubeで情報収集をする傾向があります。若年層向けの商品・サービスを展開する場合は、SNSからの集客も検討しましょう。
⑤適切なゴールを設定
オウンドメディアを運営する適切なゴールを設定しましょう。そのゴールを達成するために重要な指標となるのが、本記事のメインとなる「KPI」という指標です。以下では、このKPIについて詳しく解説します。
KPIとは
KPIは、Key Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」「重要経営指標」「重要業績指標」などと訳されます。
オウンドメディアの最終的なゴールではなく、そのゴールに向かう過程で「達成すべき目標」のことです。
例えば、最終的な売上目標を1,000万円としたときに、オウンドメディアへのアクセスが1万アクセス必要だと仮定します。この場合、「1万アクセス」をKPIとして設定し、まずはこの数値が達成できたかどうかを見ていきます。
オウンドメディアのKPIを設定する理由として、達成目標をより具体的にすることが挙げられます。KPIを設定することでオウンドメディアを運営する上での目標が明確になり、改善点や行うべき施策も見えやすくなるでしょう。
KGIとは
KGIは、Key Goal Indicatorの略で、日本語では「重要目標達成指標」などと訳されます。
こちらは、いわゆるオウンドメディアの最終目標を表す用語です。先ほどの例でいうと、「売上目標1,000万円」がKGIです。
オウンドメディアのKGIを設定する理由は、オウンドメディアの目指す方向性をはっきりさせることが挙げられます。
具体的で詳細な目標指数であるKPIを決めるためには、大きな方向性を示すKGIの設定が欠かせません。
KGIを決めるコツは、「達成期間」と「具体的な目標」を意識することです。例えば、半年後に売上1,000万円を達成するといったような形で、具体的に設定しましょう。
KPIの設定ポイント
ここでは、KPIを設定する際の具体的なポイントを解説します。KPIをオウンドメディア運営に役立てるために、以下の5つのポイントを押さえてください。
具体的であること
KPIが具体的であることは、大前提だといえます。なぜなら、KPIはチーム内で共有するものであるため、誰が見ても同じ解釈でなければならないからです。
例えば、「いつまでに」「何を」「どれだけ伸ばすのか」を具体的な指標と数値で表します。以下は、KPIの一例です。
「半年後までにPV数1万を達成する」
具体的なKPIを設定して共有することで、チームメンバーが同じベクトルで取り組めます。具体的な指標、数値を意識してください。
目標指標数値は達成が可能な指標に設定する
目標指標数値は、達成可能な範囲の数値で設定します。
なぜなら、目標が現実とあまりにもかけ離れていると、モチベーションが保てないからです。
かえって目標数値が低すぎても、目標として設定する意味がなくなってしまいます。適切なKPIの数値を設定するには、客観的に現状把握をすることが大切です。Googleアナリティクスなどのツールを利用して、データから現状把握をするようにしましょう。
ステップを細かく分解する
KPIを設定する際は、最終的な目標とするKPIまでのステップを細かく分解します。なぜなら、ステップを分解することで、やることがより具体的になるからです。
具体的に、プロジェクト全体を期間ごとに出来るだけ細かく分解し、それぞれにKPIを設定していきます。以下は、KPIを分割する期間の例です。
- 立ち上げ期(立ち上げ~1年程度)
- 定着期(半年~2年程度)
- 活用期(1年~)
立ち上げ期(立ち上げ~1年程度)
サイトを立ち上げてから1年以内は、コンバージョンを求めることよりも、たくさんの人にサイトを見てもらえるようにしなければなりません。
適切なKPIは
- 狙うキーワードでの検索順位
- ページビュー数
- 新規ユニークユーザー数
- SNSのシェア数
といった指標です。
定着期(半年~2年程度)
サイトを立ち上げてから半年~2年は、ユーザーにくり返し見てもらえることを意識しましょう。
適切なKPIは
- 定着率
- 滞在時間
- 遷移数
- 回遊率
といった指標です。
活用期(1年~)
サイトを立ち上げてから1年程経てば、コンバージョンを得ることを考えていきましょう。
BtoBサイトの場合であれば、適切なKPIは
- メールマガジン登録
- ホワイトペーパーダウンロード
といった指標です。
もちろん、一例なのでこの通りである必要はありません。各自の事業のスケールや設定期間に合わせて、ステップを分解しましょう。
KPIツリーを活用
1つのKGIに対して、いくつかのKPIを設定することになります。その際に、KPIをツリー状の図でまとめておくと、チーム内でKPIを共有しやすくなります。
上記イメージのように、最終的なゴールであるKGIのしたに主となるKPIを設定します。また、KPIの下にはそのKPIを達成するのに必要なKPIを設定し、またその下にKPIを設定するというのが作成の手順です。
KPIツリー作成時の注意点は、それぞれのKPIを重複させず、全体として漏れがないようにすることが挙げられます。正確にKPIを測定するために、KPIツリーを作成しながら、それぞれのKPIの関係を確認してください。
競合他社を参考にする
KPIを設定する際には、競合他社のKPIを参考にすることも効果的でしょう。なぜなら、オウンドメディア成功の具体的なイメージを掴みやすいからです。
競合他社を参考にする際は、当然ですが成功している企業のオウンドメディアを分析します。どういった軌跡でオウンドメディアを育ててきたのか、どういったコンテンツを入れて、どれくらいのアクセスを獲得しているのかなどを見ていきます。
どんなことにもいえますが、成功例をまねすることは重要です。闇雲に戦略を立てるのではなく、道筋となりそうな競合他社をベンチマークしておきましょう。
オウンドメディアのKPI設定方法
オウンドメディアにおけるKPI設定の流れを解説します。
①まずはKGIを設定する
売上高や利益率、受注件数などといったKGI(最終目標)を1つ設定します。オウンドメディアを作った理由をさかのぼりながら、KGIを導き出します。
中間目標であるKPIは、KGIを設定した後に逆算して設定します。
②KPIツリーを作成する
KPIの設定にあたっては、KPIツリーの作成がおすすめです。
KPIが明確になれば、直近で何をするべきか、具体的なアクションが明確になります。
③正しいKPIになっているかSMARTの法則で確認する
SMARTとは、
- 具体的で(Specific)
- 計測可能な(Measurable)
- 達成可能な(Achievable)
- 関連性(Relevant)
- 期限(Time-bounded)
の頭文字を取った言葉です。
正確に進捗を把握するためにも、「定量的に目標を設定すること」が重要です。
オウンドメディアのKPI指標事例
KPIの立て方はわかったけど、具体的にどういった指標をKPIとすれば良いのか悩んでしまう方も多いかもしれません。以下では、KPIの指標としてよく使われる指標事例を3つ紹介します。
PV(ページビュー)数
PV(ページビュー)数とは、オウンドメディア内のページが表示された回数を指す指標です。もっとも一般的な指標で、オウンドメディアへの集客がうまくいっているかを大まかに確認したいときに参照します。
CV(コンバージョン)数
CV(コンバージョン)数とは、オウンドメディアの目的が達成された回数を指す指標です。CV数の具体例は、以下のようなものが挙げられます。
商品購入
商品売上
資料請求
オンライン会員登録
お問い合わせ
リード獲得
採用 など
ECサイトであれば「商品購入」や「商品売上」が、BtoBのサービス事業であれば「お問い合わせ」などが目的となるでしょう。下位のKPIが達成されているにもかかわらず、CV数が伸びない場合、KPIの見直しや戦略の変更が必要かもしれません。
自然検索流入数
自然検索流入数とは、有料広告ではないオーガニックでの検索結果からの流入数を指す指標です。オウンドメディアの集客方法の根幹となるのが自然検索流入であるため、重要なKPI指数だといえます。
特にBtoBサービスの場合、この自然検索流入数をKPIに設定する傾向あります。なぜなら、SNSのシェア数から効果測定を行うことが難しいからです。もちろん、BtoCのサービスにおいても重要な指数ですので、全ての企業が注意して見るべき指標だといえます。
オウンドメディアの目的別KPI
オウンドメディアの目的に合わせたKPIの例を紹介します。
・ブランディング型
オウンドメディアを通して、企業やブランドの認知を広げることが目的です。
KPIの例として、PV、UU、SNSのシェア数、コメント数などがあげられます。
・獲得型
オウンドメディアを通して、見込み顧客とのつながりやリード獲得が目的です。
KPIの例として、問い合わせ数、メルマガ会員、セミナー申し込み数などがあげられます。
・採用型
オウンドメディアを通して、自社の採用につなげることが目的です。
KPIの例として、応募人数、採用率、採用コストなどがあげられます。
・購入・入会
オウンドメディアを通して、売り上げやサービス会員を増やすことが目的です。
KPIの例として、新規会員数、退会者数、販売個数などがあげられます。
KPIを達成するために必要なこと
最後に、KPIを達成するための具体的な施策を紹介します。KPIは立てて振り返りをした後に、具体的な改善行動に落とし込むことで効果を発揮します。オウンドメディアのKPIをうまく生かすために、以下の施策を取り入れてみてください。
SEO
オウンドメディア運営では、SEOを行うことが欠かせません。なぜなら、オウンドメディアへの流入の大部分は、検索エンジンからのアクセスが占めているからです。
実際、検索ボリュームの多い検索キーワードで上位表示されているコンテンツの多くは、SEOが施されています。SEOは、オウンドメディア戦略の基本中の基本なので、必ず押さえておきましょう。
Webライティング(記事作成)
ページ単位のSEOを行う際に重要なのが、Webライティングです。主に、記事構成が重要となります。なぜなら、記事構成時点で上位表示できるかどうかの8割が決まってしまうといわれているからです。
また、SEO以外に、コンテンツの質という意味でもWebライティングは軽視できません。長期的に役に立つようなコンテンツを作成するために、Webライティングのスキルも押さえておきましょう。
SNS
オウンドメディアの主要な流入経路は検索エンジンですが、近年ではSNSからの流入も見逃せません。なぜなら、SEOの難易度は年々上がってきており、検索エンジン一本に頼るのは危険だからです。
具体的には、FacebookやInstagram、Twitterなどが主要なSNSとされています。また、YouTubeの利用も効果的です。SNSを活用して、検索エンジン以外からのアクセスも確保しておきましょう。
インターネット広告
ケースバイケースでインターネット広告も活用しましょう。SEOやSNS運用は効果が出るまでに時間がかかります。一方で、インターネット広告なら、広告費をかければ好きなタイミングで広告を掲載することが可能です。
具体的には、リスティング広告やアフィリエイト広告、SNS広告などが挙げられます。有料なので広告費はかかりますが、他の施策に比べて即効性が高いので、うまく取り入れて活用したいところです。
オウンドメディアのKPI設定事例
成功しているオウンドメディアはどのようなKPIを設定をしているのでしょうか?
株式会社メルカリが2016年に運用開始した「メルカン」を例にあげて紹介します。
「メルカン」は、採用広報や採用ブランディングを主な目的として、メルカリグループ内で働く人やカルチャー、制度などについて発信しているオウンドメディアです。
KPIは「採用候補者となりうる読者、興味を持ってくれた読者の体験にいかに寄与したか」
自社内でコンテンツを制作しており、多様な部門の社員がそれぞれの視点からメルカリでの働き方や人材を取り上げて紹介しています。また英語サイトも用意しており、海外人材の採用にも効果を発揮しています。
「メルカン」を立ち上げた結果、入社前の社員にとって入社後のイメージが具体的に想像しやすくなり、社員を一気に増やすことに成功しました。
まとめ
今回は、KPIの設定方法がわからないという方向けに、オウンドメディアのKPI設定について詳しく解説しました。
本記事の要点は、以下のとおりです。
KPIとは、オウンドメディアの最終的なゴールへの過程で「達成すべき目標」のこと
KPIは具体的かつ詳細に設定し、チーム内で共有しやすいようにしておく
KPIの指標としては、PV数やCV数、自然検索流入数を設定することが多い
この記事を参考にして、オウンドメディアのKPI設定のポイント・設定するべき理由を把握し、適切にKPIを設定してください。